CASE STUDY 38
PLACE

アイチ金属

OVERVIEW

案件事例

1
木目のあるメタル

浮造りは、木目の硬い部分を残し柔らかなところを削ることで、木目を際立たせる伝統的な製材処理のひとつです。この際立った木目を生かしながらのバーカウンターを作成するのが今回のミッションでした。錫を吹き付けたのち、手磨き仕上げを行い、美しい銀肌を実現しています。 課題となったのは、一枚板的な印象の創出です。運搬や木材の都合上、すべてを一枚板で構成することが不可能であったため、分割した木材にしながらも近しい木目で組み上げていく必要がありました。天板から立ち上がり面まですべてを浮造りにしていることからも、木目の組み合わせの難易度が極めて難しく、かつ重要なポイントでした。

ピンと緊張感のある温度。

表面はすべて錫。それを磨き上げたことで生まれた表情は圧巻です。金属の手触りと温度感がバーという緊張感のある空間にフィットしています。触った瞬間、金属の温度感に驚きを感じることでしょう。さらに、指で木目をなぞることが出来るおもしろさが贅沢さをも演出し、カウンターにおいたグラスが表面に映り込む様子にも、驚きがあります。デザイナーの意図が感じられる空間となりました。 厚みを作り出すことで、木目のおもしろさと金属処理がマッチするため金属膜の厚みをどのように作り出すのかは課題でした。解決したのは、錫を複数回吹き付け、これで金属の厚みを出し、表面の仕上げに理想的な品質を作り出しています。

近未来的な表情

今回のバー空間は、コンクリートと木目、そして銀肌の仕上がりという近未来的な空間となりました。巨大な金属の箱でありながら、木目の浮き上がる異質な存在感は、このカウンターが空間に設置されたときに初めて理解できるものです。 我々にとっては、金属ではないものと金属の組み合わせという、加飾処理に関して醍醐味につきる案件でもありました。どのような素材でもただ金属表面にするのではなく、もとの素材の表情そのものに価値があり、そこに金属の加飾処理を施すことでさらに強調できることを改めて実感しました。「表情のある金属」という言葉を代弁する存在感が、より多くの方に愛されてどのような表情に進化していくのか楽しみでなりません。