CASE STUDY 54
PLACE

愛知

OVERVIEW

研究開発

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意匠性錆と自然錆のゆらぎ

腐食と金属

金属というものは、出来上がった時には安定した素材と思われがちですが、実のところ他の物質と結合した方が安定した素材になるという特徴があります。一瞬、混乱するような情報ですよね。たとえば鉄というのは、精製した後から酸素を求め酸化しはじめます。錆びに覆われ、朽ちていくことが自然なのです。これを金属の腐食と言います。自然というのは本当にすごい仕組みだと感じる瞬間です。 しかし、人間社会で使う金属素材はそれでは困ります。いかに腐食をさせず、長持ちさせるのかが重要なのです。現代社会は金属がなければなにもできないといっても過言ではありませんから、金造の耐用年数が数年しかもたないとなれば、文明の根幹が揺らいでしまいます。こうして、人間社会にはさまざまな金属が精製され、さらに合金化され、今なお新しい素材が作り出され続けているのです。

対候性鋼板(以降「コールテン鋼」)とは

対候性鋼板と呼ばれる鋼材「コールテン鋼」をご存知でしょうか。極めて有名な素材の一つです。表面をあえて錆びさせることで安定状態にし、芯材と外気を遮断することで鋼材としての強度をとてつもなく長持ちさせることに成功した素材です。一見すると錆びているものに見えますが、中は真新しい素材のまま保たれています。 錆びは、意匠として高い人気を誇ります。しかし、腐食反応であるため、錆びは金属そのものを脆くしていく。これらの相反する要素を成立させることができたのは、コールテン鋼の登場が大きな役割を果たしたと言ってもいいでしょう。私たちアイチ金属にとっても馴染みある素材の一つです。一方で、当然すべてが金属ですから重量がかなりなもののため、今度は軽量化が難しいという難点もあります。

意匠性錆と自然錆

アイチ金属にあるVeroMetalの技術を使えば、表面に金属塗料を用いて錆を生じさせた木の板を作ることも可能ですし、プラスチックを用いることもできます。強度を実現するためには、ハニカムコアを用いて表面処理することも可能です。そのため、コールテン鋼のような見た目で、軽量化を実現した門扉やドアを作ることができます。 しかしながら、自然錆と意匠性錆とでは、仕上がりが全く異なります。自然錆にはムラと退廃的な雰囲気が出るのに対して、意匠性錆は均一な錆の仕上がりとなり色味や質感といった面で高品質さを感じさせてくれます。この意匠性錆をうまく演出し、全面や一部に発出させるためには技術が必要となります。錆びを安定して意匠化するのはなかなか難しいのです。

溶射技術による錆と意匠

我々が錆を演出する際には、金属塗料を使うことであらゆる素材を対象とします。そのため、研磨、溶射技術を積極的に用います。まず、表面の仕上がり次第では、錆に極端なムラが生じます。これらを調整しながら、できる限りフラットに、逆に言えばムラムラにしたいというオーダーにはそのようにしていきます。 さらに、内壁であればまだしも、外壁に錆を生じさせる場合は外的環境に大きな影響を受けます。雨が降れば水の通り道が壁にもできます。こうした時に、とにかく表面の金属塗料の剥がれを防ぎたい。そこで、溶射技術を応用します。基材に溶射処理をし梨地を作り出し、そこに塗料を塗ることでガッチリと噛み合った仕上げとなり、塗料の剥がれを大部分防ぐことができます。こうして、どのような素材でも、コールテン鋼のような錆を安定的に生じさせています。それでも、まだまだ品質は道半ば。改善を重ねながら、まるで新しい素材であるかのような仕上がりと、意匠性の実現を目指して研鑽してまいります。