東京
案件事例
生活導線と間取り
階段は生活動線の中でも重要なものです。階段と間取りの関係はとても深く、どこにつけるかで動線や室内の印象を大きく変えます。建物の中央に配置した階段はアクセントにもなり、リビングやキッチンに近くなる理由により家族が集う場所の表情を作ってくれます。注文住宅ならば、階段そのものもイメージどおりに作れますので、まさしくその家の内部に存在する「アイコン」としての機能を持たせることができます。 同時に、安全性能が欠かせません。設置施工時の処理や、構造体としての強度が足りなければ事故につながりかねません。どのように美しい階段でも、安心を作り出せなければ全く意味も用もなさないのです。したがって、意匠にこだわる場合は、この安全性能をどのように具現化していくかにも徹底したこだわりをもたなければなりません。
美しさと強度。
実のところ、美しい階段というのは強度の実現までこみのものだと我々が感じるのは、やはり人間が直感的に階段に安全性を求めているからだと思っています。たとえば、本当に美しい仕上がりでも人間の重量や安全性に疑問を感じる階段がある場合、人間はそれを「オブジェ」とは見るかもしれませんが「安全な階段」とは認識できないのではないかと思います。よく海外でガラスの吊り橋の話がありますが、あれなんかは代表的な事例ではないでしょうか。どこか、ガラスの強度に直感的な心配があったりするがゆえに、おそるおそるしか渡れなくなってしまう。 今回てがけた階段は、強度とオブジェ感の2つがしっかり備わったものです。美しい形状、そして、限られたスペースでも採用しやすいところなどが魅力でありながら、鉄の質感が重厚感と信頼性を、そして、施された塗装によって優美で上品な印象を醸し出しています。踏み台部分に異素材が用いられていることも、そうした存在感を強調していると言えるでしょう。
施工前仮組
さて最初の写真がこの階段の施工前の仮組みです。後の写真が最初の加飾処理を行なった時の仮組みです。特にこの階段でいえるのは、仕上がりまでの繰り返しの検証に徹底した時間をかけていることです。強度の実現に関しては、設計デザイン時と、我々の製造施工時での検証がかかるためほとんど心配はいりません。今回重要なのは、その仕上がりイメージの美しさです。これは、ラインの美しさや存在感といったものの検証が欠かせません。 我々は、常に仮組みなどを繰り返しながら仕上げを行なっていきます。その存在感を見極めながらの加飾処理、そして実際の施工まで一貫した理念で取り組むことで初めて、信頼性と優美さを備えたオリジナル製品へと昇華されていきます。本案件は、そうしたものが結集した好例となりました。